初年度にあたる今年は、まず関係資料の調査と収集に努め、『S.W.ウィリアムズ家族文書』を所蔵するエール大学図書館、宝玲文庫(The Hawley Collection)を所蔵するハワイ大学図書館および幕末外国関係資料を所蔵する東京大学史料編纂所などに足を運んだ。これで、研究対象にかかわる基本的史料の大半を入手できた。 そして、本研究の基本作業の一つである『S.W.ウィリアムズの生涯と書簡』(原書は英語)の訳注にも着手し、一部完成した。最近、同書の中国語訳も出版されたので、訳者である北京外国語大学の顧鈞氏および同訳書を収録した『近代宣教師伝記叢書』の編者である上海復旦大学の周振鶴氏と意見交換を行なった。 また、より広い視野から本研究のテーマをアプローチするため、アヘン戦争による中国の開国やアロー号事件後の中国における基督教解禁にも積極的に関与したウィリアムズの思想と行動を検討し、二、三の研究論文と学会報告を書いた。 さらに、近代キリスト教の世界布教、アジア布教、中国・日本・琉球布教の全体像を把握するため、復刻版による20世紀初頭の英書および戦前の日本語研究書を購入し、戦後初期から最近までの代表的研究文献をも調査した。近代キリスト教的精神構造、キリスト布教と産業革命後の西洋の世界進出との関係、東アジアとくに日本の開国におけるキリスト教宣教師の役割などについて、原理と事実の両面から考えてみた。
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