平成17年度の成果は作業内容の点から論文の作成と資料集積・整理に分類できる。論文の作成に関しては以下の三点である。一つは和同開珎の価値について貨幣理論的考察を行い、和同開珎の価値を規定したものの違いから、貨幣理論的には和同開珎の貨幣としての性格を三期に区分すべきことを論じた。この内容は、研究会にて一部口頭発表した。第二は、和同開珎の字体の違いを貨幣学的考察によって和同開珎鋳造時期の違いと考えるべき事を明らかにした。またきわめて特異な形態を持ついわゆる古和同隷開手不隷開がかりに鋳造段階のものとしても和同開珎銀銭の鋳造停止措置と深く関わるべきものとして捉える事を明らかにした。これら二つの研究に関しては、後者はすでに原稿は完成しており、前者もほぼ完成しつつある。両者に関しては、学術雑誌への投稿を予定している。第三は、貨幣と穢れとの関係を論じた近年の研究の傾向に対して、罪と穢れ、祓えと浄めとの関係に対する重大な事実誤認があることへの本格的な論文作成への準備を開始したことである。なおこの事に関しては研究会において簡単に口頭で述べている。なお罪に関しては、『古事記』神代七世段に関しての考察を公刊した。資料整理に関しては、今年度は、研究支援者に正倉院文書にみえる銭貨資料の電算への入力を前年度に引き続き継続するとともに、特に借銭解の詳細な分析を森の指導のもとに図表化する作業を行い、従来の研究とは異なった観点から研究を行う基礎作業を行った。
|