本年度は、とくに豊富な史料情報がほとんど手つかずの状態で保管されている、石川県金沢市立玉川図書館近世史料館所蔵「松雲公採集遺編類纂」所収「石清水八幡宮旧記抄」上・下の撮影、史料情報の調査、翻刻作業を推進した。また、本研究の調査の過程で、あらたに同史料所収神社部2の「石清水八幡宮古文書目録」(旧「善法寺家文書」=「菊大路家文書」)の史料上の重要性を認知しあわせて採集した。同じく本研究に直接関連する史料の探索としては、石清水八幡宮所蔵文書や天理大学附属図書館所蔵文書を調査し、デジタルカメラによる撮影や、業者委託の撮影および画像データ処理を行った。そして、東京大学史料編纂所架蔵影写本や写真帳から本研究に関係する「石清水八幡宮」参考史料を抽出し、翻刻して、各々のCD・ROMによるデータベースを作成した。 本研究の成果による史料情報の公開・提供については、まず平成16年度の史料紹介を目的として、「石清水八幡宮引付関係史料の紹介」を『白山史学』第40号(95〜133頁)に掲載した。内容は、「石清水八幡宮旧記抄」上の約8割の史料に関し、解題と注記を付して史料翻刻を行った。 本研究の採集史料にもとづいた研究発表については、別掲の雑誌論文・図書にあげた通り、2つの学会誌に掲載され、刊行予定の学術論文集の図書に拙稿「石清水八幡宮寺と境内都市『八幡』の検断と訴訟」の収載が決定している。今後も本研究の成果を即時に公開することに努めていきたい。 以上、平成16年度は、新出史料によって、従来ほとんど不明であった、石清水八幡宮の内部組織や境内都市「八幡」の実像を究明し、神社史料研究とともに中世史研究上の成果をあげることができた。
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