平成16年度〜同18年度における本研究は、石川県金沢市立玉川図書館近世史料館所蔵「松雲公採集遺編類纂」所収「石清水人幡宮旧記抄」上・下の撮影、史料情報の調査、翻刻作業を主に推進した。さらに調査研究の過程で、あらたに「松雲公採集遺編類纂」所収・神社部二の「石清水人幡宮古文書目録」(旧「善法寺家文書」=「菊大路家文書」)の未紹介史料を発見し、採集した。そして本研究に直接関連する史料の探索としては、石清水八幡宮所蔵文書や天理大学附属図書館所蔵文書に関し、実地調査し、あわせて撮影して、画像データの採集を行った。またその一方で、東京大学史料編纂所蔵の影写本や写真帖から本研究に関係する「石清水文書」を抽出し、翻刻する作業を推進した。「石清水文書」の全貌を把握するには、今後の研究にまたなければならない。ただし本研究によって、従来未発掘の史料を翻刻し紹介したことの意義は、すでに諸論稿において引用されている通り、あらたな史料遺産を斯界共有のものとし、中世史研究の発展に寄与できた点にある。 研究代表者を中心とする別掲の【研究発表】にあげたように、従来ほとんど不明であった、石清水入幡宮の内部組織や境内都市「八幡」の実像を究明した。また、前近代のもっとも主要な内陸水路・淀川交通の実体を解明し、中世神社史料研究はもとより中世都市論・交通論や社会史研究、および中世後期の幕府・守護との政治交渉史の成果をあげることができたと確信する。
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