研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、近代日本において西洋農業がどのように導入され、そして定着していくか研究することであった。しかし、研究前半の西洋農業導入過程の分析の際、膨大な資料と新たな事実が判明し、この解明に時間をかけた結果、研究目的の一つである、西洋農業の定着過程の分析には着手することができなかった。この点に関しては、今後、究明していくこととする。西洋農業の導入過程の分析では、大きく分けて三つの成果を上げた。第一に西洋農業が導入される契機となった、明治初期民部省の勧農(開墾)政策を、開墾を中心に分析したことである。この結果、民部省前期の開墾政策は、治安維持という緊急性を帯びていたため性急で正確さを欠いており、後期の開墾政策では、士族の禄制改革進行により士族開墾が重要視され、これを援助するために欧米農業の試験的導入がはじめられたことを明らかにした。第二は、従来、明治初期の大蔵省では、目立った勧農政策が行われていないといわれてきた点を考察した。その結果、明治初年、政府は士族の東北開墾を構想したが、明治4年8月以後、これをストップし、荒蕪地・官林の払下をはじめた。しかし、士族の開墾構想を廃案にしたのではなく、政府は厳しい財政状況下、費用が嵩む開墾に着手できなかっただけで、荒蕪地・官林の払下代金で開墾資金を貯蓄した。そして本資金は農業留学生費と農業試験場経費に使用されたことを明らかにした。第三に、西洋農法の導入過程において、東洋農法はどのように扱われたのかという点について、清国人お雇い教師に視点をあてた。その結果、清国人教師は風土に共通点があること、低コストであることから招聘された点を明らかにした。しかし、事業は失敗した。以上のように、西洋農業の導入過程の研究も、まだ十分尽くしたとは言い難いが、明治初期の勧農政策について、従来スポットが当てられてこなかった民部・大蔵省期の政策を明らかにした意義は重要であると思われる。
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すべて 雑誌論文 (6件)
『人文学報』 歴史学編第36号
ページ: 41-71
The Jounal of Social Sciences and Humanities ((Historical Studies 36), Tokyo Metropolitan University) 400
『人文学報』 歴史学編第35号
ページ: 1-25
The Journal of Social Sciences and Humanities ((Historical Studies 35), Tokyo Metropolitan University) 385
『異文化交流史の中の教育者達に見る思想・実践の変容と現代的課題に関する学際的研究』
ページ: 13-24
Interdiciplinary Studies on the Changes of Thought and Practice As Well As the Present-Day Problems Seen in Several Educators within the Cross-Cultural History