研究課題
基盤研究(C)
2年間の研究期間においては、睡虎地秦簡と張家山漢簡という二つの出土資料に基づいて。(1)訴訟手続の復元とその特徴、および(2)刑罰制度の特徴とその歴史的変遷、の二点を実証的に解明することに焦点を当てた。その結果明らかになった事実は、およそ次の通りである。(1)刑事訴訟の最初の手続を担ったのは、獄吏と呼ばれる役人であった。彼らは官秩の低い下級役人であったが、訴訟手続の中で最も中心となる重要な役割を担っていた。すなわち第一に、被疑者との問答を通して、供述の矛盾を突き、罪状の自認に追い込むことであり、第二に、自認した罪状に応じて的確な刑罰を引き当てることである。この第二の手続においては、律令のような法令ともに、行事と呼ばれる判決例も参照された。紀元前3世紀の秦の国では、様々な事件の判決例を各種書籍の形によって全国の獄吏に周知させる体制がすでに整備されていた。(2)戦国時代から漢初にかけての労役刑には定まった刑期がなく、贖身もしくは恩赦による以外、解放の道はなかった。各種の労役刑に刑期を設定したのは、前漢文帝の13年(前167)に施行された刑制改革であり、『漢書』巻23に記される文帝の詔勅は、刑期設定を命じたものとして解釈されなければならない。ただし、こうした刑期の無い労役刑とは別に、期間を定めた軽度罰労働が文帝以前から存在していた。文帝改革の意義は、その制度を労役刑全体に拡大した点にあると理解できよう。
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東洋史研究 65巻1号
ページ: 1-36
The Journal of Oriental Researches Vol.65,No.1
法史学研究会会報 第9号
ページ: 89-92
Bulletin of the Society for Legal History No.9