本年度は、山東省の墓誌に関して集中的に調査するとともに、墓の紀年から読み取ることのできる墓誌作製の目的に関して考察を行った。 (1)山東省の墓誌について 魏晋南北朝時代の墓誌は、多くが洛陽周辺で作製されており、山東省で出土の墓誌は100件にも満たない。この墓誌に注目した理由は、これらがすべて被支配者である漢族のものであり、洛陽の墓誌とは違った記述内容が見られるからである。 その違いとは、一族の記録および妻や子供の記録が非常に多いことである。墓誌銘は死者(墓主)を追悼・顕彰するために製作するものであるから、通常、墓主の記録が中心に行われる。しかし、被支配者である漢族の墓誌には、一族・家族の記録を長く記録する資料が多く、元氏のものとは根本的に異なる。この違う部分を利用することにより、本研究の「婚姻と閨閥構築」の現状が見えるのである。特に清河崔氏に注目し、その墓誌を利用して家系図を描くことも行った。 (2)墓誌の紀年よりみる墓葬について 墓誌は、なぜ墓中に埋葬されるのかという基本的な疑問を解決する先行研究は、見ることができない。墓誌作製の目的を探ることは、墓誌に記述される文書そのものの性格にも影響することである。本年は、墓誌が作られる過程を墓誌銘の紀年(卒年月日と葬年月日)・墓誌銘の撰文者の記録から、墓誌作製の過程と墓誌銘作成の過程を考えた。
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