研究課題
基盤研究(C)
本研究課題においては、元明清期におけるもっとも豊富で重要な民間文書である「徽州文書」、およびそれと密接に関連する族譜などの地方史料を活用して、中国東南盆地地域を中心とした、元明清期における長期社会変動を、宋元史・明清史という従来の断代史的枠組みをのりこえて明らかにすることを目標とした。具体的には、特に東南中国の社会結合を考えるうえで特に重要なテーマである、父系親族結合としての「宗族」の形成と発展の長期的過程の解明をもっとも主要な課題とした。また従来の宋元・明清期の宗族発展史研究においては、主として士人や官僚を輩出したエリート宗族を対象として、そのシンボルである族譜・宗祠・族産という「三点セット」の成立と拡大が、研究の中心とされていた。しかし本研究では、有力宗族だけではなく中小宗族も考察の対象とし、かつ上記の「三点セット」だけではなく、特に明代中期以前の宗族形成や、中小宗族にとって重要な意味を持った墓地や、しばしば「共業分股」という形態により保有・経営される山林などに注目した。こうした研究の成果として、まず近年の欧米で提起されている「宋元明移行期」論について、日本における研究と比較してその意義と問題点を論じ、まず元代に先行する宋代における累世同居的大家族から、宗族結合への変容について検討し、ついで元代における宗族形成の展開を、墳墓における祖先祭祀と墓地の所有形態に注目して論じた。さらに明清徽州の中小同族による宗族形成を、多数の文書史料を分析して、明代中期の家産分割、清代中期の山林経営や地域内紛争と関連して論じた。さらに宋から清にいたる同族共有資産に対する法的保護の変遷についても、体系的な検討を行った。あわせて長期社会変容の考察のうえで重要な意味を持つ、村落レヴェルの識字文化についても、海外の諸研究を踏まえて検討と問題提起を行った。
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