本研究の課題は清朝の中央官制について、内閣・翰林院・都察院を主たる素材として検討し、これら三機関を中心とした政治現象がいかなる主体によって、いかなる政治的資源に基づき、いかなる過程によって導き出されるのかということを明らかにし、清朝の政治過程における各機関の役割・機能を相互関連的に分析することである。これらの作業を通じて、伝統中国の社会システム全体の中での内閣・翰林院・都察院等の中央行政機関の占める位置を明らかにし、中国における「政治」の持つ意味を歴史的に展望することが可能となる。 平成16年度における、本研究の具体的研究実績としては、「方観承とその時代-乾隆期における一知識人官僚の生涯-」という論考を『東洋文化研究』に投稿し、査読を経て掲載された。この研究は、科挙を経ることなく内閣の書記官である内閣中書として任官し、乾隆期にその資格で軍機処の書記官である章京として活躍し、さらに地方官に転出後は直隷省(現河北省)の長官である直隷総督にまで昇進して、治水や通貨政策等に多くの業績を残した一人の特異な経歴をもつ漢人官僚の生涯とその官僚としての事績を分析したもので、清代官僚制における内閣の機能の一端を明らかにし、さらには前近代中国官僚の属性である知識人としての一面を描き出した。また、その他の関連する研究実績としては、『歴史学辞典』12、王と国家(弘文堂、2005)に、本研究の課題であるところめ「翰林院」を含め、官僚制に関わる4項目の執筆を行った。
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