研究概要 |
本研究の課題は清朝の中央官制について、内閣・翰林院・都察院を主たる素材として、これら三つの中央行政機関を中心とした政治現象がいかなる主体によって、いかなる政治的資源に基づき、いかなる過程によって導き出されるのかということを明らかにし、清朝の政治過程における各機関の役割およびその機能を相互関連的に分析することである。 本年度の具体的研究実績としては、Documents in Thirteenth-Century ChinaをThe Haskins Society Journal, JAPANに、「清代文書行政における内閣の政治的機能について-日本・琉球関係襠案を素材として-」を東京大学史料編纂所研究紀要に投稿し、掲載された。前者は、13世紀の安徽省の土地売買文書を分析しその位置づけを明らかにするとともに、17世紀清代の史料との同質性を指摘した。本研究の基礎となる史料学研究である。後者は、清代の内閣の制度的変遷を概述し、その文書行政システムの中の位置づけを、内閣が関わった題本や移会などの日本・琉球関係の清代行政文書史料を素材として検討したものである。清初期において、清朝は皇帝権伸張のため、漢人を利用して明代の制度である内閣制度を導入し、有力な満州人貴族を牽制したが、清中期にいたり、内閣から営々と生み出される満州語文書は、むしろ満州人政権たることの存在証明として政治的な機能を果たした、と結論づけ、翰林院との関係にも言及した。都察院の研究が課題として残るが、来年度に研究成果を発表するためのデータ整理にすでに着手している。
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