研究概要 |
平成17年8月23日〜9月3日にかけて,吉林省前ゴルロス蒙古族自治県・肇源県,黒龍江省ドゥルベド蒙古族自治県・富裕県・訥河県・斉斉哈爾市,内モンゴル自治区莫力達瓦ダウール族自治旗・阿栄旗,および北京市において,研究協力者であるブレンサイン(布仁賽音)氏とともに,聞き取り調査と資料収集を行った。聞き取り調査は,主として富裕県・訥河市・斉斉哈爾市・莫力達瓦ダウール族自治旗・阿栄旗において,各県・旗等の宗教民族事務局の協力の下に,ダウール族・満族・クルグズ(キルギス)族・モンゴル族(イフミンガンおよびバルガ)・エヴェンキ族の郷土史家・歴史に詳しい老人・地方政府関係者等約20人に対して行った。重点的に聞き取った事項は,各民族集団の来歴,氏族構成,生活文化の変遷,言語使用状況,他集団との関係等である。聞き取りで得られたデータを,各種文献資料と照合しつつ分析した結果,これらの人々の居住地・氏族構成・アイデンティティ等の背景に,清代の八旗制による統治の影響が認められることを確認した。これは,平成16年度に大興安嶺北麓のいくつかの地区で行った調査の結果と符合するものである。ただし,今回調査した嫩江〜大興安嶺南麓一帯は,清代においては,斉斉哈爾・メルゲン(現嫩江市)を中心として配置された正規の駐防八旗と,ブトハ八旗と称される,狩猟・牧畜等の生業を営みつつ兵役にもついた特殊な集団とが併存していた地域であるが,駐防八旗とブトハ八旗の区別が,現在の民族集団のあり方にどのように反映しているかという問題については,今回得たデータにさらに精細な分析を加えて,引き続き検討する必要がある。調査対象地域では,聞き取り以外に,各地域で出版された関連文献,清代の墓碑等についても,収集と調査を行った。また,北京では,短時間ではあったが,中国第一歴史档案館において,研究課題に関連する清代文書資料を閲覧した。
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