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2006 年度 実績報告書

近現代中国における欧米キリスト教宣教師の対ムスリム布教に関する歴史社会学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 16520429
研究機関敬和学園大学

研究代表者

松本 ますみ  敬和学園大学, 人文学部, 教授 (30308564)

キーワード東洋史 / 民族学 / 宗教学 / イスラーム復興
研究概要

キリスト教の対中国ムスリム布教は、19世紀から20世紀初、イギリス、アメリカの福音主義者主導で行われた。宣教師のムスリムに対する直接布教は、当然のことながら二つの世界宗教の優劣を問う教義問答と両者の紛糾にまで発展した。自共同体の中からキリスト教への改宗者の輩出を防ぐために、中国ムスリム側が乗り出したのは、一種の近代的宗教改革であった。それは、次の特徴をもつ。1.西欧の近代的諸精神--先進、進取、自発、自立など--を中国ムスリムが自らの存在意義とすること。2.宣教師がもちこんだキリスト教的「宗教概念」の導入によって、それまで存在一性論的スーフィズムの世界観の中ではぐくまれたイスラームの倫理体系、世界観を、キリスト教的世界観に匹敵するものとして理解しなおしたこと。3.もともとは人間完成のための宗教意識を、国民国家形成のための国民意識形成と重複して解釈したこと。4.中東イスラーム世界のいわゆるモダニストの近代思想の影響が大きいこと。
特に、キリスト教宣教師を論駁するための知識を獲得するために、大量の書籍がアラビア語から翻訳された。それは、もともと西欧諸国の植民地、保護国となっていた中東諸地域の知識人によって反植民地闘争の一環として論じられたものであった。それらはほとんど例外なく、厳格なコーラン解釈によって、近代化を果たそうという内容となっていた。
キリスト教宣教師が一般に使った対中国ムスリム布教マニュアルは中東の対ムスリムマニュアルを使いまわしたものであった。宣教師の挑戦をかわし、自宗教の振興を図るためには、中国ムスリム知識人は中東のアラビア語による対キリスト教論駁書に依拠するしかなかった。結局、ペルシャ語系統の存在一性論文書は反近代的、反現実的とみなされ、中国ムスリム知識人に軽んじられるようになり、20世紀半ばには中国で400年以上の歴史をもった存在一性論的イスラーム解釈は中国のほとんどの地域で忘却されてしまうことになった。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2006

すべて 雑誌論文 (5件)

  • [雑誌論文] Rationalizing patriotism among Muslim Chinese : the Impact of the Middle East on the Yuehua journal2006

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto, Masumi
    • 雑誌名

      Intellectuals in the Modern Islamic World : Transformation, Transmission, Communication

      ページ: 117-142、375

  • [雑誌論文] 日本の<歴史的ロマン主義>を考える2006

    • 著者名/発表者名
      松本ますみ
    • 雑誌名

      東アジア<共生>の条件(世織書房)

      ページ: 91-113、404

  • [雑誌論文] 現代中国伊斯蘭与基督教的和睦共処2006

    • 著者名/発表者名
      松本 真澄(ますみ)
    • 雑誌名

      鄭和与文明対話(寧夏人民出版社 中国)

      ページ: 259-254

  • [雑誌論文] 中国公教育とイスラーム宗教教育のジェンダー平等観 : 回族/ムスリム女性であることと「軍事化」の関わりから考える2006

    • 著者名/発表者名
      松本ますみ
    • 雑誌名

      国際シンポジウム「グローバリゼーションの下での少数民族女性のエンパワーメント」報告書(2006年11月5-6日)於早稲田大学国際会議場

      ページ: 33-38

  • [雑誌論文] 公弁教育和非弁教育中的性別与女性発展-- -項関於伊斯蘭女学的問巻調査分析調査2006

    • 著者名/発表者名
      松本 真澄(ますみ)
    • 雑誌名

      第二次回族学国際学術研討会文彙編(中国、寧夏 2006年9月3日-9日)

      ページ: 392-400

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公開日: 2008-05-08   更新日: 2016-04-21  

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