研究課題/領域番号 |
16520431
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
山本 謙治 阪南大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (30309372)
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研究分担者 |
来村 多加史 奈良文化女子短期大学, 環境教養学科, 教授 (70390218)
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キーワード | 魏晋南北朝時代 / 環東海地域 / 南朝 / 専築墓 / 画像専 / 墓室壁画 / 雲気文 / 亀甲文 |
研究概要 |
本年度は、山本・来村両名とも本研究テーマに必要とされる基礎データの収集を目的とした。 山本は中国全域における専築墓の分布データ(1975件)を作成。このうち漢代〜南北朝期の南朝専築墓を、(1)江蘇(384件)・浙江(321件)・安徽(80件)、(2)広東(239件)・江西(188件)・福建(108件)、(3)湖南(79件)・湖北(142件)、(4)河南(71件)・山東(10件)の4地域1722件に大別し、遺跡および遺物としての画像専資料を収集、データベース化を進めた。データ蓄積と並行して、画像専分析においては、(a)南朝固有の植物文様の発見、(b)南朝における漢代以来の雲気文の展開の2点を問題化した。前者は現段階では未だ見出せないが、後者は展開系譜を考え得る資料を蓄積しつつある。雲気文は高句麗壁画から百済の陵山里古墳群に至るまでの広範な地域で流行した文様であるため、それをもって魏晋南北朝時代から隋唐時代にかけての環東海地域における文化系統を論じることができると予測される。 来村は壁画研究において南朝系譜を跡付ける前提として、新出の北斉崔芬墓(山東)・東魏茹茹公主墓(河北)・北斉高潤墓(河北)・湾〓北朝墓(河北)・婁叡墓(山西)の壁画資料を収集・分析した。北斉崔芬墓壁画は竹林七賢図などの南朝的要素を含むと同時に北朝壁画に通じる要素を兼備する。こうした南北朝文化の共有性を軸にして、南北朝時代後期における両文化の交流史を明かすことができる。またこうした作業の蓄積により、南北朝時代における高句麗墓室壁画との比較対照が可能となり、後漢墓室壁画をベースとする高句麗壁画の伝統から北朝壁画の影響下に発展した新風を抽出することができる。また、北朝壁画をベースとして分岐発展した隋唐壁画と高句麗壁画との相違点を分析することによって高松塚古墳壁画ならびにキトラ古墳壁画の芸術系統を推定することができる。その他の個別的成果としては、藤ノ木古墳の鞍飾りに見られる亀甲文の祖型が後漢時代の墓室壁画にあることを発見した。目下、十六国時代に中原地区から燕地の鮮卑族を経由して六世紀の日本に亀甲文が伝播するまでの経路を特定している。
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