研究概要 |
平成17年8,9月に、ブランデンブルク州立中央文書館において、ロッホウ家「レカーン領文書」(BLHA, Br.Pr.Rep.37,Reckahne)とマルヴィッツ家「フリーデルスドルフ領文書」(BLHA, Br.Pr.Rep.37,Friedersdorf)の解読と分析を行った。両文書の比較分析から、それぞれの文書について、以下のような性格の文書群であることが明らかになった。 「レカーン領文書」文書は、村落社会の状況を明らかにすることに有益である。まず、農村民の相続関係の記録を豊富に蔵しており、村民各層の資産状況、相続慣行、家族関係がこれらの史料より分析が可能となる。また、長期にわたる裁判記録は、領主と村民の権利関係の変遷を追うことを可能にしている。他方、同文書は、領主家に関する情報が少なく、また領地経営組織に関する文書も乏しい。このため領主の動向は、裁判記録以外の同文書からは、解明は困難である。 これに対して「フリーデルスドルフ領文書」は、領主家の相続、資産、債務、収支関係の史料を蔵し、また領地経営組織に関する史料も豊富に収めている。このため18世紀から19世紀前半にかけての領主家の親族関係の変化や、領地経営近代化についても分析可能である。しかし村落社会についての史料は断片的であり、領主=領民関係の清算については解明可能であるが、村落の社会構造については、そこからは十分な検討は不可能である。 以上のように、貴族家の親族構造と領地支配の実証的解明を目指す本研究にとって、両文書はそれぞれ弱点を持っているが、他方で両文書を組み合わせることで、互いの不十分点を補完しあえることが、今年度の文書館の調査と史料の分析から明らかになった。
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