研究概要 |
平成18年8,9月に、ブランデンブルク州立中央文書館で、ロッホウ家の関係文書(レカーン文書)の記録取りを行った。前年度の調査では、裁判史料を主に収集・分析してきたが、今年度も引き続き作業を続けるとともに、同家の領地レカーン領の実地調査も行った。昨年度までの調査で、18世紀に関しては農民の対領主裁判の文書を検討し、この紛争が19世紀の領主制解体にどのような影響を持ったのか解明しようとしたが、今年度の調査では19世紀にはいると、領民の中で下層民が領主にたいして権利を主張する動向が顕著になっていったことを確認した。しかし18世紀後半から19世紀前半にかけての領民の対領主裁判関係の文書には未読のものが多く、引き続きかなりの調査を要することがわかってきた。なお副次的産物としてマルヴィッツ家のフリーデルスドルフ領文書の補充調査の過程で、19世紀初頭の当主の弟であるAlexanderが、ハレ大学に提出した農地制度に関する学位論文を発見した。この人物は夭折したため思想史研究の世界では無名であるが、ハンナ・アーレント「ラーエル・ファルンハーゲン」の中でラーエルに強い思想的影響を与えた恋人として描かれている。これによって当時のロマン主義知識人が近代的農地改革にどのような立場をとろうとしていたのかが、解明できるかもしれない。 3年間の調査によって、フリーデルスドルフ領文書に関しては、テーマに関係する文書はほぼ調査を終えることができたが、レカーン領文書については下層民関係の裁判史料など未読文書が多く残ってしまった。報告書では、主にマルヴィッツ家・フリーデルスドルフ領に関して、ユ.同家の相続制度と、2.領地経営に関して、18世紀から19世紀前半にかけてそれぞれ変化する過程を詳細におい、同家の近世的土地貴族から近代的ユンカーへの転身の経緯を描き出している。
|