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本研究は、フランス近世(アンシァン・レジーム)期における官吏任用システムの形成と変容について、当時の社会全般に深く根を下ろしていた官職売買制度venalite des officesの詳細かつ綜合的な再検討を通して分析し、その特質を明らかにすることを目的とする。これまでの官職売買制度の研究では、官職保有者と直轄官僚との二項対立的な関係が描かれているが、実際のところ売買の実態といった具体的様相については充分に明らかにされておらず、官職保有者を前近代的な家産官僚として捉え、直轄官僚を近代的な官僚システムと見るだけでは、当時の複雑な統治システムのメカニズムは解明し尽くせないと考える。
本年度の研究においては、昨年から引き続いて、主たる分析対象とした国王宮廷の宮内府とその廷臣群についての考察を進めた。彼らは宮廷内の煩瑣な儀礼体系に絡め取られ、王権の施す恩恵を請い願うだけの無力な存在として見られてきたが、当時の王権が各種儀礼などの象徴的権威に大きく支えられている実態が明らかになるにつれ、こうした「お飾り」としての宮廷貴族が、実のところ統治構造においてより重要な役割を果たしていたのではないかと推測される。しかもこうした宮廷貴族たちが占めるポストは、原則として金銭によって購える売官職であった。彼ら宮廷貴族の実態を明らかにするため、今年度は、宮廷=宮内府および近衛府の組織の概要をできるだけ詳細に捉えることを試み、その組織の内実、配置された諸役人の役割などの解明に努めた。また、ブルボン朝期の国王宮廷が時代とともにどのような性質の変容をこうむるのかにつき、大まかな見取り図を示した。こうした研究成果を論文としてまとめ、『西洋史論叢』に掲載した。
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