昨年度に引き続き、フィレンツェ国立公文書館に所蔵されているCinque conservatori del contado e dominio fiorentinoシリーズの文書のうち、共和国領域行政に関わる1440年代の記録を調査した。当該部局である領域管理五人委員会が、フィレンツェ領域の行政官達に発送した行政書簡の内容の概略と、それに関わる決定事項を記した記録のうち、昨年度、調査しきれなかったものである。これに関連して、Monte comune o delle graticoleのシリーズの領域税務記録も調査した。また、Signori e collegiという史料群のDeliberazioni in forza di ordinaria autoritaおよびDeliberazione in forza di speciale autoritaのシリーズの記録を調査し、領域行政に関する中央政府の決定からその背景にある領域行政の理念と仕組みを読み取れるかどうか検討。さらにStatuto delle comunita autonome e soggetteシリーズのモンテルーポおよびサン・ドナート・イン・ポッジョ(バルベリーノ・ディ・ヴァルデルサを含む行政単位)の条例や決議記録を調査した。以上から、領域行政を中央と地方の双方から検討している。またモンテルーポの条例の変遷(1389〜1566)から、従属都市の条例の制定過程を考察する材料を得た。本研究は基本的に15世紀を対象としているが、今年度は16世紀前半まで調査の射程を延ばし、Carte Strozzianeシリーズの複数の史料群に散在する領域行政関係の私信と公文書も調査した。これは、15世紀末から増える行政論から領域支配に関わるメンタリティや理念を探る試みとして、来年度も継続したい。
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