昨年度に引き続き、フィレンツェ国立公文書館において、領域の自治共同体の条例の写しを保存したStatuti delle comunita autonome e soggetteのシリーズ中のアレッツォ(14世紀末にフィレンツェ支配下に入った都市)に関わる記録を調査すると共に、諸共同体の条例変更の写しを1冊にまとめた14世紀末の帳簿(同956)を確認し、領域行政のあり方とその意識が14世紀末から15世紀初頭に大きく変わった可能性を検討した。Signori e collegiのシリーズに含まれる領域行政に関する中央政府の決定も、昨年度からの継続で調査している。またこれに関連して、Miscellanea Repubblicana 144の文書も調査した。これは、1393-1403年の各共同体の法改変とその認証の記録をまとめたもので、紙質や透かしの模様から14世紀末から15世紀に作成されたものであること、各共同体から提出されたものを後から1冊に綴じたものではなく、複数の共同体の記録を一括して記録していったものであることが確認された。さらに、一昨年度と昨年度に見てきた史料は、フィレンツェ側に保管されていたものであるが、今年度はこれに対応する在地史料の存在を確認するべく、アレッツォ国立古文書館で条例制定・改変関連の史料を調査した。ここでも条例改変の記録を1冊にまとめた大部な帳簿が存在し、その作成者はフィレンツェ当局に所属する委員・公証人であることが確認された。これらの史料の作成過程を検討すると改めて、領域行政に関わるフィレンツェ書記局とそこに関わる公証人の存在の重要性が、認識される。これらの調査の成果・持ち帰ったデータとマイクロフィルムを検討して、中心=フィレンツェと周辺=領域共同体との関係を、双方から見ていく試みを継続しつつ、来年度に研究をつなげるものである。
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