最終年度として、これまでの3年間にフィレンツェとアレッツォにおいて調査・収集した史料の分析を行つた。主として、フィレンツェ国立文書館所蔵のCinque Conservatori del ContadoとStatuti delle comunita autonome esoggette、 Signori e collegiのシリーズの文書、およびアレッツォ国立文書館所蔵の条例制定・改変の史料がその対象である。これらの分析からは、領域行政のあり方とその意識が14世紀末から15世紀初頭に大きく変わった可能性を指摘できた。また、その背景に、フィレンツェの行政府であるプリオーりのイニシアティヴを無視できないことも、確認された。すなわち、1393-1403年の各共同体の法改変とその認証の記録などの存在、また、領域支配監督局Cinqueconservatori del Contado e Distrettoから領域の従属共同体への指示や、従属共同体からの要請に対する対応から、個々の共同体が抱えていた問題の実態と、フィレンツェ側のそれへの具体的対応は必ずしも明確にはならないものの、フィレンツェと領域共同体との行政的結びつきは、かなりの程度までシステマティックに設定されており、少なくとも14世紀末からは、フィレンツェの支配は一定の集権的志向を持っていたと考えられるのである。以上のような、14世紀末から15世紀初頭におけるフィレンツェの権力構造の変化から、領域国家としてのフィレンツェ共和国の性格を検討・整理した。その結果については、中世的な都市国家の性格と近世的な国家の領域在り方をどのように見直すべきかという観点も含みつつ、最終年度報告書にまとめた。
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