研究課題
線文字B粘土板文書の分析と考古学的データの分析とを統合的に展開することによって、ミケーネ社会からポリス社会への構造転換の動態を明らかにするという本研究プロジェクトの主旨に即して、本年度は粘土板がミケーネ時代の宮殿においていかに機能していたのかという問題に中心的にとりくんだ。具体的には、葉状粘土板と頁状粘土板という外的形態の相違と、表意文字と表音文字の併用状況に着目することによって、粘土板の使用実態の背景には、これに関わる人々のリテラシーの問題が存在していたことを明らかにした。この研究成果については、まもなく公刊される予定の古代世界におけるリテラシーに関する論文集に公表する予定である。さらに、アルファベットの起源に関するウッダードの近著を参照することによって、あたかも完全に断絶しているように見える線文字Bとアルファベットとのあいだに、キプロス音節文学を介した連続性が存在した可能性を検討した。アルファベットが線文字Bに遡るギリシア語正書法の伝統を踏まえてキプロスで成立したことを主張するウッダードの研究は、アルファベットの起源問題にとどまることなく、本研究がその課題としているミケーネ社会からポリス社会への構造転換のプロセスの解明にも大きく関わってくることが明らかになった。また、これと並行して、ミケーネ時代から古典期にかけての遺跡に関する最新の考古学的情報をまとめて、共著書として刊行するとともに、本研究の課題をより大きな文脈に位置づけるために、新書の形で古代ギリシア史の諸問題を社会に問いかける試みも行った。
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Journal of the School of Letters, Nagoya University 1
ページ: 43-51
SITES : International Conference Series 4
ページ: 13-30
SITES : Journal of Studies for the Integrated Text Science 2
ページ: 1-10