研究概要 |
補助金が交付された3年間に行った研究とその成果は以下のとおりである。 1.基本史料の文献学的・歴史学的研究 本研究の基本史料であるディオドロス『ビブリオテケ(歴史総覧)』第14,15巻とリウィウス『ローマ建国以来の歴史』の第2ペンターデ(第6〜10巻)を中心に前4世紀初頭に関する文献の史料批判的研究を行った。リウィウス『ローマ建国以来の歴史』の第2ペンターデの前半部分(第8巻24章まで)の翻訳と注釈の作業を完了し、京都大学学術出版会に入稿した。これは「西洋古典叢書」の第IV期配本として出版される予定である。 2.イタリアおよびドイツでの文献収集と現地調査 3回の現地調査-平成16年8月31日〜9月10日(ローマ、ミュンヘン)、平成17年9月8日〜9月19日(ローマ)、平成18年8月31日〜9月12日(ローマ、ミュンヘン)-でカエレ(チェルヴェテリ)、ピュルギ(サンタ・セヴェーラ)、ウェイイ(ヴェーヨ)、ラヌウィウム(ラヌーヴィオ)、ウェリトラエ(ヴェッレトリ)の遺跡と考古学博物館を訪れ、発掘報告や考古学関係の論文の内容を実見によって検証した。併せて、本プロジェクトに関係する書籍・論文で日本では入手・閲覧が困難なものや、ラティウムを中心とする中部イタリアで行われている発掘の最新の報告を収集した。 3.研究成果のまとめ エトルリア南部・ラティウム・カンパニア地域におけるローマの覇権確立と、カルタゴやギリシア植民市で構成される西地中海世界の政治的状況に関する諸問題のうち、ムニキピウムの起源に関する論攷を完成させた(『史学雑誌』第116編第2号に掲載)。また、今回の補助金交付期間内に完成させることはできなかったが、「エトルリア人都市カエレのローマへの併合と「投票権なき市民権」の起源」も完成が間近である。更に「ローマ=カルタゴ条約」に関する研究文献、ピュルギの神殿の発掘報告も系統的に収集しており、研究成果を近い将来発表する予定である。
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