1.英領アフリカ自然・環境保護政策史に関する既存の研究を分析し、本研究を位置づけ、その独創性を確認した。 (1)19世紀から20世紀前半の英領アフリカにおける自然保護運動の萌芽についての研究は、従来、若干の俯瞰的研究を除いて、地域ごとのケース・スタディにとどまっていること。英本国を中心とする体系的な保護の政策の実態について、ほとんど研究がなされていないことが明らかとなった。 2.「帝国野生動物相保護協会」と野生動物相保護のネットワークの研究 (1)有力圧力団体の「帝国野生動物相保護協会」について、会報および、会員間で交わされた書簡などの分析を通じて、この団体が、従来評価されてきたような本国のエリート・ハンターの団体としての性格を当初はもっていたものの、それが1920-30年代を通じて徐々に薄まり、生態系そのものの保護へと活動目的を転換していったことが確認された。 (2)この団体を中心とするネットワークが、英領アフリカのみならず、アジア各地(インド、セイロン、ビルマ、マラヤなど)、さらには白人自治領(カナダ、オーストラリアなど)にもおよび、情報収集、圧力の行使のチャンネルとして機能していたことが明らかとなった。 (3)さらに、この団体の情報収集網が、帝国の枠を超えた領域にまで及んでいたことが明らかになった。たとえば、1920年代終わりから、遠洋捕鯨規制の活動にもとりくみ、我が国の遠洋漁業の実態についても情報を収集していること、またその活動が36年のロンドン捕鯨会議に結実したことなども明らかになった。
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