研究概要 |
今年度は 1.16世紀のロシア社会における企業や商業及び企業家・商業者に関する研究をフォローすること 2.16世紀のロシア国内の流通に関わる史料及び外国貿易に関わる史料の蒐集 に力点を置き,主として, 3.ロシア中世・近世経済史関係の文献や史料の購入・複写 4.データのメディアへの入力・整理(データベースの作成) を行った。 蒐集した文献の読みを通して,確認できたことは, (1)16世紀のロシアにおいて主な交易相手地域の一つは,チャンセラーのロシア漂着とその後のモスクワ会社の設立に見られるように,イギリスであったこと, (2)イギリスとの交易についてもそうであったが,当時のヨーロッパにおいて中心的位置を占めていた低地地方,特にオランダなども含めた,バルト海を通じての交易が重要であったこと (3)ヨーロッパとの交易を検討する際には,黒海を通じての地中海地域,特にイタリア諸都市との交易関係も無視できないこと (4)他方で,アジア,特に中近東を注目しなければならないこと (5)特に,黒海及びカスピ海を通じてのアジア地域との交易も考慮しなければならないこと (6)交易地域とともに,取り引きされていた輸出品についても,国内で展開されていた製造業(企業)の種類・程度を把握する上で,目を向ける必要があること (7)また,輸入品を検討することも,交易相手国・地域,その担い手を把握するためだけでなく,それら商品の購入者の属する社会階層を把握するためにも不可欠であること (8)史料的には西ヨーロッパ関係のものが多いこと (9)商人団体,特権商人としてのゴスチ等,商人の組織について,これまでの研究が典拠としている史料類を徹底的に吟味する必要があること 等に留意しなければならないということである。
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