研究概要 |
今年度は, 1.16世紀のロシア社会の企業及び企業家に関する帝政期及びソ連時代・その後の研究をフォローすること 2.当時のロシアを訪れた外国人のロシアに関する覚え書きの類を蒐集すること 3.ロシア中世・近世経済史関係図書の購入・複写 4,データのスキャナーによるデジタル化とデータベース化 5.データの分析 に力点を置いた。 その結果,一定の文献及び史料を蒐集することができたが,データ分析を十分に行うことができず,また,史料及び文献の読みについても,不十分な状態に止まってしまった。そのため,当初予定していた,今年度中に本研究に関する一定の見通しを立て,中間的な成果を研究論文としてまとめるということができなかった。ただ,次のような点を確認することができた。 (1)バルト海を通じての交易の重要性はもちろんであるが,交易拠点としてのロシア北西部の諸都市(ポロツクなど)にも注意しなければならないこと, (2)西ヨーロッパスからカンジナヴィア半島北部を経てロシアに至るにルート上にある港アルハングリスクとそこからモスクワに通じる位置に立地するヴォログダなどのロシア中央部の諸都市にも注意すること (3)当時のロシアを訪れた外国人の覚え書きの中に記された交易地,特に南部地域とそこでの商品などはアジアとの交易を検討する上でも注意しなければならないこと (4)アジアとの交易では,カスピ海・アラル海を経て中央アジアのブハラ,サマルカンドへの流れを押さえる必要があること (5)担い手については,すでに研究の蓄積が相当あるとはいえ,流通面に止まらず生産面でも17世紀以降に重要な役割を果たす実業家ストローガノフ家などについても検討を加えなければならないこと
|