今年度は、研究計画に従い、次の2つの問題について検討を進めた。一つは、初等教育の組織化に関して王政期から革命期につながるフランス的特質を解明することである。この作業を進めるために、18世紀に実在した一人の初等学校教師の日記を入手し、その記録を手がかりに、彼が生きた18世紀後半のパリ近郊農村において、初等学校教師が農村共同体でいかなる役割を果たしたかを明らかにした。また革命期に彼がどのように考え、行動したかも詳細に検討した。そして王政期の初等学校教師は、啓蒙期においてしだいに宗教色を薄め、革命に対処できる村の知識人へと変貌を遂げるさまを明らかにすることができた。この研究成果は、「18世紀フランス農村の初等学校教師ーピエール=ニコラ=ルイ・ドゥラエの日記を読む」として論文にまとめた。これは論文集『教師の比較社会史』(昭和堂)の一編として本年9月に刊行される予定である。 もう一つは、フランス革命期の家族史・子ども史について研究を深めることである。これは、王政期と革命期に共通するフランス的特質を見きわめながら、他方で革命期に付け加えられた新たな要素を検出するために不可欠の作業であったため、革命期の民事法典の分析などを通してこの作業を行った。その結果、革命期には、かつての教会に代わり国家が家族を支え管理する要となる過程を明らかにすることができた。この研究成果のうちの一部は、「フランス革命の女性」として、すでに校了している次の論文集に掲載される。『革命と性文化』(山川出版社・2005年5月刊行予定)
|