研究課題
基盤研究(C)
古代ギリシアにおける碑文建立の文化の実態を探ること、これが本研究の目的であった。公的空間に碑文を建立するという現象にとどまらず、その起源、機能、変容について考察することを課題とした。ただし、史料の偏在の問題もあり、アテナイを中心に考察せざるを得なかった。以下が、議論の大筋と当面得た結論である。内容の如何に関わりなく、碑文はすべて第一義的に神への奉納物であった。大部分の公的碑文が、決議から会計記録にいたるまで聖域に建てられたのもそのためであった。碑文が聖域に奉納されることによって、そこに書かれた内容は誠実なものとして受け止められ、また人々は書かれた内容には従わなくてはならなかった。碑文建立という文化は、奉納物に名を刻み自身の存在を明らかにするという私的行為から社会的行為へと広がることからはじまったと考えられる。次に、以上を前提としながら、「名乗り」の社会的機能について考察した。すなわち、公的空間に自らの名を残すと言うことは何を意味するのかを問うた。名前を書くという行為は、単に責任の所在を明らかにするにとどまらず、名乗った者自身が名を残すことへの執着があったことをも示している。そして実際に決議碑文や会計記録に記録された人物名の大部分が、社会におけるエリートに属する層でもあったことを鑑みるなら、ポリスという共同体内部におけるエリートの自己主張とも見ることができるであろう。一方、一般民衆にあっても、文字を書くという行為が、意外に広がっていたことを確認した。しかしながら、高度に文字を扱う知的エリートに対しては時に皮肉を込めて見ていたことも、graffiti等の史料から確認された。ここに文字や碑文に対するエリートと非エリートの見方・受け止め方の差異を見て取ることができる。
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Proceedings of the ICANAS 38(仮) (印刷中)
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