研究概要 |
2004年3月から6月にかけて、群馬県の財団法人である大川美術館で「ベン・シャーン展」が開かれた。日本でも過去に何回か「ベン・シャーン展」が開かれているが、今回の「ベン・シャーン展」には、「リルケ『マルテの手記』より」(全24点)、「版画集『レヴァナとわが悲しみの聖母』」(全10点)などのほか、「連邦住宅開発センター壁画のための習作」、「なぜ?」(ラッキー・ドラゴン・シリーズ)、「三人の道化師」などの貴重な作品が展示された。私は大川美術館から招待を受け、館長・理事長の大川栄二氏や学芸員の春原史覚氏とべン・シャーンについて意見交換をし、ニューディールの連邦芸術計画についても様々な議論を行った。(作品の紹介は図録『ベン・シャーン展』参照) また同年8月22日から9月1日まで、ハーバード大学のフォッグ美術館(Fogg Art Museum)に出かけ、ベン・シャーン・ファイルについて調査を行った。ベン・シャーンは、かつてハーバード大学で講義をした時期があり、その時に寄贈した資料や文献などが貴重なファイルとして保存されていた。特に私は、まだ日本人ではあまり目にしていない、次のようなファイルや資料を検証することができた。これらは、当時のシャーンの社会意識や芸術観を研究するうえで、とても有益なものであった。 *Collection Description of the Photographs By Ben Shahn (1898-1969) and Related Material (1)Collection Summary (2)Detailed Description of Collection Contents, by date and location or by date and subject (3)Other Artists Represented (4)Major Resources for Ben Shahn's Art 特に(4)には、Ben Shahn Papers, Archives of American Arts, Farm Security Administration/Office of War Information, Visual Artists and Gallery Associationなどの資料も含まれ、シャーンを研究する上で非常に有益であることが分かった。しかも、フォッグ美術館のなかにあるAgnes Morgan CenterのMazie McKenna Harris氏にインタビューできたことは、研究を進める上で大きなステップとなった。その他、ワシントンの国立公文書館や芸術資料館からも資料を入手できたため、連邦芸術計画(Federal Art Project)がニューディール政策の民主的な側面を表し、アメリカ現代美術の発展に貢献したプロジェクトであることがますます明らかになった。ベン・シャーが、この連邦芸術計画に参加し、アメリカ的な「社会的リアリズム」の世界を創造した芸術家であることも明確になった。
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