ライプチヒ大学とケルン大学に所蔵されているライプチヒ商科大学とケルン商科大学の「学籍簿」を調査した。とくに在籍学生の「国籍」の確定に重点をおいた。またライプチヒの「学籍簿」とケルンの「登録簿」の記載内容から在籍学生の「信仰」を特定する作業をおこなった。これらの作業は次年度も続行する。さらに(イ)ベルリン商科大学のデータを集成し、(ロ)ディプローム試験合格者のなかのユダヤ人の構成を研究した。(イ)については、1906年から1920年までディプローム試験に合格した836名のデータを集成した。男性730名、女性106名、女性の構成比は12.7%であった。この数値は、ケルン10.1%、ミュンヘン7.9%、フランクフルト2.6%、ライプチヒ1.5%と比較して最も高い。ドイツの商科大学のなかでベルリンが女性に最も人気があった。さらにベルリンでは836名のうち210名(25.1%)が外国人であった。ライプチヒの41.9%にはおよばないが他の商科大学(12%から13%)に比較してはるかに高い。ベルリンの商科大学が外国人にとってかなり魅力的な高等商業教育機関であったことが分かる。(ロ)については、ユダヤ人が数千年の昔から国際商人・金融業者として知られているので、彼らの子弟が新設の商科大学に殺到したことは想定でき、じっさい、ディプローム試験に合格したユダヤ人(正確にはユダヤ教徒)の構成比はハイデルベルクやゲッチンゲンなどフンボルトの理念による古典大学に比較して高いことが確認できた(ライプチヒ14.6%)。しかし国籍をみると大半が外国人であった。つまりドイツのユダヤ人はドイツの経済市民が教養市民と古典大学に対抗して創設した商科大学ではなく、教養市民の再生産機構である古典大学を選択していたことになる。このイ・ロのデータを在籍学生全体のデータと対比する作業が次年度の課題である。
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