研究概要 |
新潟県小千谷市真人町に所在する真人原(マットバラ)遺跡は,後期旧石器時代後半期の尖頭器をともなう遺跡で,信濃川左岸の後期更新世末の段丘上に立地する.A, B, Cの3地点からなり,現在B地点の調査を継続中である. 本年度の科研費により,B地点の第3次調査を実施した.遺物の集中区に周縁調整の尖頭器を確認し,層位と石器の形態学的特徴からA, C地点と同時期であることが判明している.石材に注目するとA, C地点は多様な石材(珪質頁岩を主体に珪質凝灰岩,無斑晶質安山岩,少量の黒曜石)が利用されているのに対し,B地点は珪質頁岩と頁岩だけで構成されていることが判明した.時期的な同時性と使用石材の共通点と差異をふまえ,信濃川中流域における後期旧石器時代後半の居住のパターンと石材利用の実相にせまる基礎資料を今回得ることができた. 研究代表者は,2004年夏に実施した発掘調査の結果と,いままでに調査して解明が進んでいるA, C地点の成果をあわせ,2004年11月にドイツのベルリンでおこなわれたシンポジウム「日本考古学日本原始古代の変革と連続」(ベルリン日独センター主催)において報告をおこなった(日本列島における後期旧石器時代研究の枠組み・年代.比較の基準Frameworks, dating, and comparative criteria on the Upper Palaeolithic in the Japanese islands). 分担研究の信濃川中流域の地殻変動,段丘形成に関しては,真人原遺跡周辺を中心に,過去の地殻変動による地層の液状化について調査を実施した.
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