本年は北アメリカにおける木材利用に関する情報収集を中心にすえ、文献調査を行った。結果として、アメリカ大陸では低湿地遺跡の調査例がほとんどなく、ひいては木製品からみた後氷期森林資源利用の実態把握は困難であることが判明した。年代を大きく下げた上で、北西海岸及びフロリダの2、3の遺跡と民族誌情報から窺う程度である。植生上の類似から日本の縄文時代と比較する上で期待した北米東部の森林地帯には、低湿地遺跡の調査例は発見できなかった。本年の調査研究内容は以下の通りである。 1.国外所在の文献収集および情報収集 カリフォルニア大学バークレー校人類学部・羽生淳子助教授のもとで、人類学図書館所蔵の文献を調査した(8月26日〜9月9日)。閲覧および複写した文献ジャンルは下記の通り。 (1)北アメリカ北西海岸の低湿地遺跡の調査報告 (2)北アメリカ太平洋岸(カリフォルニア〜アラスカ)の先史時代関係文献 (3)北アメリカの植生および民族植物学関係文献 (4)フロリダの低湿地遺跡およびそれらから出土した木製品に関する研究文献 2.国内所在の文献および情報収集 (1)総合地球環境学研究所・内山純蔵氏のもとで、B.A.R.の閲覧と複写 (2)奈良文化財研究所・松井章氏所蔵のHoko River関係文献の複写 (3)首都大学東京・山田昌久氏、東北大学鈴木三男氏、森林総合研究所能城修一氏よりの情報収集、文献閲覧 3.古代東地中海世界における木材利用を知る手掛かりとして、『イリアス』『オデュッセイア』に記載される木製品樹種や樹木の種名を調べた。同様に、古代エジプトの木材利用に関して、Ancient Egyptian Materials and Technology等の文献を調査した。
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