アメリカ合衆国南部のフロリダ州とテキサス州は、第二次世界大戦後、北東部や中西部からの人口流入が続いている。北東部や中西部から、これらの州に流入する人口の多くは65歳以上の高齢者である。この高齢者の移動は、退職した人々が余生を温和な気候の地域で送るためと、と説明されてきた。しかし、高齢者はフロリダ州ではフロリダ半島の東海岸と西海岸、テキサス州ではメキシコ湾岸に居住することが多い。これらの地域には高齢者のためのコミュニティ(retirement community)が存在して、そこではレクリエーション施設や医療サービスの充実を謳い文句にして、高齢者を惹きつけている。そこで、本研究は合衆国南部のフロリダ州、テキサス州へ流入する人々の移動パターンを明らかにした上で、高齢者はどのような要因で上記の地域に流入するか、高齢者はどのように移動先の居住環境を評価して住み着くのかという居住地選択過程を分析することを目的とする。 本年度は、アメリカ合衆国南部に移動する高齢者人口の流入先を特定するために、人口移動のデータを合衆国国勢調査局から入手し、合衆国南部への高齢者移動パターンをカウンティー(郡)別に把握した。この結果、高齢者人口の流入はフロリダ州東海岸のデード(Dade)郡を中心とする地域と西海岸のタンパ・セントピータースバーグ市を中心とする地域、そしてテキサス州南部のコーパスクリスティ市を中心とする地域に多いことが分かった。そこで、平成16年9月にフロリダ州西海岸のタンパ・セントピータースバーグ地域の高齢者コミュニティを訪問し、高齢者コミュニティの立地、自然環境と住民の前住地、およびそこでの生活について調査を行った。この地域への流入人口は、北東部や中西部からの人々に加えて、高齢者人口が多くなりすぎたフロリダ半島の東海岸からの流入も多いことが判明した。また、高齢者コミュニティの立地はレクリエーション施設との関係も強いことが分かった。
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