本年度は近年のソフト系IT産業の全国的な分布傾向と主要都市内部におけるソフト系IT産業の立地について検討を加えた。 その結果、2002年のデータによれば、東京23区に全国の事業所の3割が集中しており、ついで大阪府・神奈川県・愛知県・福岡県・北海道など、大都市を有する都道府県が高い集中度を示している。しかしながら、この数年間の伸びは地方都市の方が高い数値を示している。ソフト系IT産業をインターネット・ソフトウェア業・情報処理サービスの種別にみた場合、インターネット・情報処理サービスは全国的に分散する傾向が強いのに対して、ソフトウェア業、は東京都を初めとする大都市を含む道府県への集中度が高い。このような傾向は、人口(1万人)当たりの事業所数で検討を試みても同様であった。 次に、都市内部レベルにおけるソフト系IT産業の立地傾向をみると、(1)各都市の主要鉄道駅の駅周辺に集積しており、東京ではJR秋葉原・神田・御茶ノ水駅周辺、新宿・渋谷地区に集中し、大阪では新大阪・心斎橋周辺に、名古屋では地下鉄鶴舞線沿線に多く分布していること、(2)この5年間の新設・移転動向をみても、既存集積地内部およびその周辺地区という限定された範囲内での動きが大半であること、が明らかとなった。(1)・(2)の立地傾向ともに、オフィスの一般的な立地傾向と概ね一致するものであるが、異なる点はその集中度と求心性にあり、ソフト系IT産業はオフィス一般に比べてやや分散的であり、移転の範囲が比較的広域に及ぶ点である。
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