本年度は、主要都市における都市内部レベルにおけるソフト系IT産業の立地要因と、立地変動に伴う都市内部地域構造の変容に関して、検討を加えた。 その結果、立地要因に関しては、顧客への接近性や鉄道駅への利便性、賃料の妥当性、適当な業務空間の存在、通信環境のよさが指摘される。これらの立地要因はオフィス立地の一般的な立地条件である接触条件・交通条件・空間条件に対応するものであるが、ソフト系IT産業の1つの特殊な立地因子として情報通信インフラの整備度があげられる。また、移転理由として、オフィス空間の拡張や賃料の問題があげる企業が多いが、情報サービス対象である企業オフィスの集積地から限定された空間的範囲での近距離移転が大半であり、都心部・副都心・都心周辺部という都市内部においても特定の地区への立地指向性が強いことを伺わせる。ただし、今後より高度な情報通信インフラもつような大型ビル施設が建設された場合、通信環境の問題と関連して、その場所が新たなソフト系IT産業の集積地となることが考えられる。 次に、都市内部地域構造とソフト系IT産業の立地の関連であるが、サービス対象である企業・官公庁オフィスの立地する地区もしくはその近接地区に立地する場合が大半であり、ソフト系IT産業が都心部や副都心以下の都市内部中心地に立地集積する事例は、東京を除くと、ほとんど認められない。東京では既存オフィス中心地区ではない秋葉原に集積がみられるが、これは都市全体でのソフト系IT産業の集積量がある一定の値を超えた状況においてみられる特殊なケースである考えられる。東京においても渋谷・新宿・池袋等の副都心地区と港区・千代田区・中央区の中の都心周辺地区の立地集積が進行しつつある。これに対して、福岡では博多駅周辺、札幌にいても札幌駅北口周辺、名古屋では、既存の2つのオフィス業務地区の中間地区である伏見地区にソフト系IT産業の集積がみられ、都市内部中心地構造の変容に影響を与えつつある。
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