本研究は、近年のわが国におけるソフト系IT産業の分布状況を、都道府県レベル、市区町村レベルで把握し、次に主要都市内部における立地集積に関する諸特性を全国的な動向として考察し、東京・大阪・札幌・仙台の4都市をとりあげ、立地集積の特性とソフト系IT産業の立地形成の背景について検討を行い、さらに、立地要因や立地変動に関しても分析を行ったものである。その結果は、以下のように要約される。 1.全国的な分布傾向として、東京・大阪・神奈川・愛知・福岡・北海道などの三大都市圏や広域中心都市の所在する都道府県に事業所が集中しており、ソフト系IT産業の大都市立地指向性が明瞭であり、とりわけ、東京に関しては、人口1人あたりの事業所数においても最も高い数値を示し、また、23区内での事業所数も全国比30%近くを占めており、ソフト系IT産業におけるわが国の集積拠点であることが認められる。 2.主要都市内部に共通する立地傾向として、都心部および副都心にある鉄道ターミナル駅周辺への立地が顕著である。 3.立地要因として、「賃料の妥当性」、「営業企業へのアクセスの良さ」、「最寄り駅へのアクセスの良さ」など、一般的なオフィスの立地条件である接触・空間・交通条件に対応する立地要因が重要であると認識されている。 4.立地移動については、短距離移転の傾向が強く、移転前の立地環境に依存する傾向が窺え、これも一般的なオフィスの立地移動に関する特性と同様の傾向である。 5.都市内部地域構造との関連については、主要都市内部において既存の都心部および都心周辺部、副都心への立地集積が顕著であるが、その内部においてソフト系IT産業に特化した機能的な立地分化傾向を示しつつある一方で、東京ではやや分散的な立地の兆候も求められ、今後の情報化の進展によっては、ソフト系IT産業を核とした都市内部中心地が増加する可能性がある。
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