研究課題/領域番号 |
16520491
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研究機関 | 国学院大学 |
研究代表者 |
田原 裕子 國學院大學, 経済学部, 助教授 (40282511)
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研究分担者 |
荒井 良雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50134408)
岡本 耕平 名古屋大学, 文学部, 教授 (90201988)
林 和生 國學院大學, 文学部, 教授 (30135488)
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キーワード | 福祉国家 / 高齢者介護 / 高齢者の居住地移動 / 上海 |
研究概要 |
本研究の目的は、高齢者に関わる社会保障制度と高齢者の生活活動の日中比較を通じて、福祉国家の地理学において検討が遅れている東アジア型福祉国家の共通性と相違点を描き出すことである。平成16年度の研究実績は以下の通りである。 1 福祉国家の地理学に関する文献調査 福祉国家に関する文献を広く収集し、既存研究の整理を行なった。現在までに(1)従来の福祉国家の類型論においては「(労働力の)脱商品化」が主要な指標となるため、中国のように多くの農民人口を抱える国家を同じ枠組みで検討することは困難であること、(2)福祉国家(レジーム)論において「脱商品化」、階級化に加え、「脱家族化」が注目されていること、(3)日本、中国を含むアジア諸国の社会保障制度は、経済発展の時期と民主化の時期の違いにより、多様性がみられるが、その一方で、欧米先進国における福祉国家のゆらぎに対応して「思想的早熟性」を共有していることなどが明らかになった。 2 中国における高齢者福祉・生活実態に関わる現地調査 平成16年9月に実施した成都、上海市における現地調査ならびに海外共同研究者との議論を通じて、近年、中国政府は高齢者福祉における地域、社区(コミュニティ)の重要性を強調するようになったが、一方、高齢者と地域のかかわりについては、これまで単位(≒職場)によって供給されていた住宅の市場化が進んでいること、都市再開発にともなう居住地移動(単位住宅のとりこわしによる立ち退きなど)が多いことなどから、居住の不安定化している状況を理解した。また、高齢者介護・福祉施設における聞き取り調査を通じて、中国における高齢者福祉政策の実情について理解を深めた。
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