研究課題/領域番号 |
16520491
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研究機関 | 国学院大学 |
研究代表者 |
田原 裕子 国学院大学, 経済学部, 助教授 (40282511)
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研究分担者 |
荒井 良雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50134408)
岡本 耕平 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (90201988)
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キーワード | 中国 / 都市 / 高齢者福祉 / 居住地移動 / 福祉国家 / 上海市 |
研究概要 |
昨年度の研究の成果と課題は以下のとおりである。 1.福祉国家の国際比較に関する文献調査を通じて、最近の福祉国家(レジーム)論において、「脱家族化」の指標が注目されていること、1980年代以降の欧米先進国における福祉国家のゆらぎに対応して、社会保障の整備が不十分な段階にある社会においても福祉国家を否定的、消極的にとらえる「思想的早熟性」をアジア諸国が共有していることなどが明らかになった。 2.中国都市における現地調査を通じて、改革開放、社会主義市場経済の進展に伴い、以前は職場によって保証・配分されていた住宅の市場化が進んでいる実態を理解した。経済発展に伴う都市再開発によって、住宅の立ち退き・郊外移転が進められていることとあわせ、高齢者の居住が不安定さを増していることが明らかになった。 3.中国都市高齢者の生活活動に関する活動日誌データを入手し、翻訳・再コーディングなどデータ整理を行った。 以上の点を踏まえ、今年度は中国都市における高齢者福祉の脱家族化、市場化に関する現地調査、高齢者の居住地移動に関する情報の収集、高齢者の活動日誌データの分析などを行った。 高齢者福祉の脱家族化、市場化に関しては、上海市を事例地域として、高齢者の入所・通所施設について、立地、経営主体、定員などのデータを収集した。その結果、1980年代以降、地方政府の直営による施設の新設は急速に減っており、企業・単位による開設が盛んである実態がわかった。 高齢者の居住地移動については、都市再開発や、孫の世話を理由とした転居の多さなど、日本の高齢者との違いが明らかになった。また、高齢者の生活活動については、中国都市の高齢者は日本の都市高齢者と比べて性別による活動パターンの違いが小さいといった点が明らかになった。
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