研究概要 |
本研究の目的は、北海道苫小牧市と福岡県大牟田市を事例として、様々なアクターが経済開発と環境保全に関する提言・議論・行動を通じて、相互にどのように関係しているかを明らかにするとともに、この相互作用によって地域振興がなされうるのかを明らかにすることにある。 苫小牧では、2001年9月にトヨタ自動車北海道(株)など8社によって「苫小牧ゼロエミッション・ネットワーク」が結成された.その目的は廃棄物ゼロ化の推進である.参加各企業は廃棄物処理の現場で報告しあい、これを契機にゼロエミッション化が各社とも進展してきた.埋立廃棄物ゼロ化の推進により,コスト削減を実現できるという意味は、各企業にとって重要である.コスト削減という個別利害の追求が社会全体の利益につながりうる.これは,ホーケンの言うナチュラル・キャピタリズムの好例である.しかし、このネットワークが地域社会に与えるインパクトはまだ大きくない。 大牟田ではエコタウン事業が推進されてきた。その問題の1つは、RDF関連施設の不調にあるその建設計画の段階から市民団体が中止を申し入れていたし、事故や運転停止のたびに市長や発電所所長などに抗議文や質問状を送る行動を続けてきた。他方、大牟田市が現在最も力を入れているエコタウン事業は、リサイクル企業誘致である。2004年3月以降5社が立地した。その中には、紙おむつリサイクル事業を推進する企業のように、循環型社会構築のために注目できるものもある。しかし、全体として、既存企業も含めての連携が弱く、市民との関係も含めた社会的資本が弱い。 この研究から次の結論が導き出される。環境と絡めた地域振興のためには、ナチュラルキャピタリズムを活かせるよう、社会的資本が蓄積されている必要がある。苫小牧では、前者が有効に作用している事例はあるが、社会的資本の蓄積が進んでいるとは言い難い。他方、大牟田ではそのいずれもが弱い。
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