研究概要 |
人が集まり様々な活動を行う都市環境では、それぞれの活動に相応しい施設や装置の建設・製作が必要とされ、そのプロセスとしてデザイン行為が行われている。このプロセスにおいては、活動の目的にあわせた機能性や、場所性、気候環境、あるいは景観やアメニティといった多様な指標が必要とされる。 特に街路をはじめとする公共的空間では、公共セクターが行う交通や生活設備に代表されるインフラストラクチャーの整備の充実が、最重要課題とされてきた。しかし、インフラストラクチャーの量的充足が市民的了解を得つつある今日、公共的空間に求められる役割は変容しつつある。中でも街路や交通結節点は人やものの移動、交通といった従来的な目的から、人々の様々な意思のもと行われる行為・活動に適応する必要がある。 都市におけるそうした行為・活動のケースの一つとして、イベントを上げることができる。公共的空間でのイベントは、交通を目的とした街路や、移動手段への乗降を目的とした駅や駅前広場などにおいて、通常の利用方法とは異なる変則的な行為・活動を行うものである。本研究では、青森県五所川原市の立債武多をはじめとした伝統的な祭事や,国土交通省の社会実験制度(オープンカフェ等地域主体の道路活動)を活用し行われた、福岡市の天神社会実験・天神ピクニック(憩いと魅力の道路文化創造社会実験)『TENJIN PICNIC』を対象とし公共的空間での催事、および環境装置のあり方に関する意識調査・実態調査を行った。 今回の調査から、都市の街路空間への多様な利用に関する意見を読み取ることができる。都市における街路空間は、移動のための空間から、人と人とのコミュニケーションの場、そこで過ごす時間を楽しむための場として認識されており、空間利用の目的や方法にあわせた環境装置のありようを考える上での重要な示唆となった。 平成5年の道路法施行令改正により、道路管理者が設ける上屋やベンチは道路付属物として扱われるようになり、道路での行為についての解釈が広がった。また今回行われた社会実験では、街路に沿道の空間を含めた公共的環境での人々の活動・行為に相応しい制度や整備方法・運用方法を探るきっかけになるものである。 不特定多数の人々が利用する空間である街路や都市の空間は、そこでの活動や行為、利用者の意識、利用する設備や装置によって変化し続けると考えられる。
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