研究課題
本年度は、以下の3点を重点として研究を行った。(1)福建省西部地域の客家の文化およびその歴史的形成過程:福建省西部・汀州地域の客家に関しては、本年度に蔡リンの研究が出版されるなどの動きがあったが、この蔡リンの先行研究を批判的に読み込みつつ、同地域に関する民族誌的記述ならびに若干の歴史文献に基づいて、その文化的特色と、歴史的変遷過程について一定の理解を得た。特に、ショオ族の先民とされる華南の山地民との連続性に関する主張が、主に福建省地域の客家研究者によって展開されている点が注目される。(2)海南島の客家と「客」概念について:海南島の客家は、その客家方言等の文化要素を残しつつ、一部がリー族籍を取得するなどの変容もみられる。海南島では、「客」という概念が多様なレベルで使い分けられており、そうした地方の社会・文化的コンテキストの中で客家系移民が定着し、エスニックな集団として輪郭を維持してきた過程を、仮説的なモデルを立てて説明した。(3)客家の移住伝承である寧化石壁伝承を、広東本地人の移住伝承である南雄珠キ巷伝承との比較において分析し、両者の異同について考察を進めた。そして、広東、福建、海南など異なる地域の客家の間でこの石壁伝承がもつ社会・文化的な意味がどのように異なるのかを考察した。(2)の研究成果については学術雑誌論文に投稿済み。また(1)(3)については論文執筆を準備中である。
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東北アジア研究 10号(印刷中)
季刊民族学 115号
ページ: 3-74
中国における民族表象(長谷川清, 塚田誠之編)(風響社)
ページ: 331-364