最終年度である平成19本年度は、以下の点を重点として研究を行った。 (1)客家研究史の全体像について: 昨年度に引き続き、客家言説の歴史的形成ならびに客家研究史のオーバービューに関して、飯島典子氏の著書など新たな展開を踏まえつつ、客家研究史全体に関する研究代表者(瀬川)なりの結論を導くべく、総括に向けての準備を進めた。 (2)羅香林の古典的客家研究の再検討: いくつかの補遺資料の収集に加え、あらためて羅香林らによる古典的な客家研究について読み直すことにより、今日的な視点からのその価値に対する評価を行うとともに、その限界や偏向に対する批判点を整理した。 (3)研究成果の総括と報告書作成: 上記の一連の研究結果を踏まえ、国内外の関連研究者との意見交換も行いつつ、本研究課題の最終的成果報告書の作成を行った。成果報告書の内容は以下の通り: はしがき I研究経過に関する総括 I-1本研究の目的/I-2本研究の実施に至る研究経緯/I-3研究経過II研究成果報告 II-1はじめに/II-2客家に関する総説/II-3客家語に関する言説とその再考 II-4寧化石壁と〓西客家に関する再考/II-5海南島客家に関する再考/II-6おわりに 引用文献/地図 以上の研究を通じて、日本でも中国本土でも客家研究に関するパラダイム・シフトが1990年代以降進展し、ほぼ完成に至っていること、そして今後の課題は、そのようにして整えられた基盤に立ちながら、より実証的な客家研究の推進と、少数民族研究との統合的発展が望まれることが確認された。
|