本年度は、本研究の調査候補地においてフィールド・ワークを行い、人々の強固な紐帯を必要不可欠とする組織態(社会、経済、政治、福利厚生など生活全般にわたる共同の組織の管理システム、活動、規則など)を、インタビューや参与観察、映像記録、文献資料収集等によって精緻に実体化した。その結果、強固な人的紐帯と共同性を不可欠とする社会、経済、政治などに関する組織態を、当該社会において総合的に把握することができた。 具体的には、まず、新潟県小千谷市においては、昨年度に引き続き闘牛、錦鯉という地域アイデンティティーとなる伝統的文化資源をめぐる組織態の情報を収集した。それにより、過疎や高齢化という地域社会の弱体化する状況、さらに、震災(新潟中越地震)復興活動において、伝統的文化資源が、人々の紐帯と強く関連する信頼やネットワークなどの社会関係資本を創出、強化するという重要な研究の方向性をさらに深めることができた。 中国浙江省開化では、根芸という地域資源の新しい創出運動をめぐる組織態の情報(組織名、構成員数、構成員名、構成員の続柄、構成員の年齢、組織図、組織運営の費用額、費用負担、組織の目的、規則、運営法、リーダーの選出法、合意形成法、組織の活動の頻度、組織への参加状況、組織の歴史的変遷、組織への関与の任意性、組織に対する住民の意識等)を収集した。それにより工芸を通した地域発展における多様なアクターの共存と競合、それと信頼などの社会関係資本との関連という、重要な研究の方向性を得ることができた。
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