平成19年度は、本研究の調査候補地においてフィールド・ワークを行い、人々の強固な紐帯を必要不可欠とする組織態(社会、経済、政治、宗教、福利厚生など生活全般にわたる共同の組織の管理システム、活動、規則など)を、インタビューや参与観察、映像記録、文献資料収集によって精緻に実体化した。 具体的には、新潟県小千谷市において、昨年度に引き続き闘牛、錦鯉という地域アイデンティティーと結びつく伝統的文化資源をめぐる組織態の情報を収集した。それにより、過疎や高齢化という地域社会の弱体化する状況、さらに、震災(新潟中越地震)復興状況において、伝統的文化資源が、人々の紐帯と強く関連する信頼やネットワークなどの社会関係資本を創出、強化するという重要な研究の方向性を、さらに深めることができた。また、当該年度においては、そのネットワークが現在拡大され、地域を越えて生成されている状況を新しく発見できた。それは日本国内にとどまらず、この地の伝統的文化資源(錦鯉)を受容した海外にまで広がっており、結果、従来のコミュニティーを基盤とした社会関係資本から、アソシエーションを介したネットワークを基盤とする社会関係資本への移り変わりという重要な論点を導き出すことができた。 このような調査研究とともに、本年度は研究成果の公開も行った。具体的には、昨年までの本研究の成果を、国内外の関連シンポジウムで発表するとともに、国内外の書籍、雑誌に計5点の学術論考を発表した。
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