研究課題
今年度はスールー海域世界を中心とした人とモノの移動と交流について、とくに(1)スールーを中心とする「海賊」と称されてきた海洋民集団の前近代から現代に関する活動の実態、ならびに(2)養殖真珠や真珠母貝など水産工芸品の移動やその生産技術の移動と交流に関して調査研究・資料収集を実施し、また研究成果を内外のワークショップ等において報告を行った。まず(1)についてはシンガポールにおいて前植民地期から植民地期、独立後の期間に関する主として植民地行政当局側の文献記録収集と分析のためシンガポール国立大学、同国立図書館、同公文書館等で主に文献資料の収集と分析による研究を実施した。(2)に関しては真珠養殖や真珠貝加工技術がどのようにして日本人を含めた技術者とスールーの真珠母貝資源の利用を契機に大規模に展開し、またその際の技術等が最終的に仏領ポリネシアを含むオセアニア世界にまで移動・伝播していったかについて日本国内および仏領ポリネシアにおいて実地調査と資料収集を実施した。今年度の研究成果については、まず(1)に関しては上海社会科学院で開催された国際ワークショップ"PORTS, PIRATES AND HINTERLANDS IN EAST AND SOUTHEAST ASIA : HISTORICAL AND CONTEMPORARY PERSPECTIVES"(平成17年11月10日から12日開催)において"Piracy in Contemporary Sulu-An Anthropological Case Study"と題するペーパーとして報告し、現在、シンガポールのInstitute of Southeast Asian Studies (ISEAS)出版局から出版準備中(英文論文集の一章として)である。(2)に関しては「真珠の資源人類学・序説」と題し、特定領域研究「資源人類学」小生産物班研究会(平成17年11月26日開催)の場において調査研究成果の一部を報告した。
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社会空間の人類学(西井涼子・田辺繁治(編)共著)(世界思想社)
ページ: 65-90
PORTS, PIRATES AND HINTERLANDS IN EAST AND SOUTHEAST ASIA : HISTORICAL AND CONTEMPORARY PERSPECTIVES(国際ワークショップ。於上海社会科学院) (2006年度中にISEASより英文論集の一部として出版予定)
アジア・アフリカ言語文化研究所『通信』 115号
ページ: 60-61