「観賞用動植物」として金魚を主な対象として調査研究を進めた。日本の金魚には約30種類の品種が存する。その中から、トサキンとナンキンという金魚の品種を取り上げた。これらは、地域的に限定された範囲で改造が進められて独自の特徴を現在に伝える品種である。現地調査の内容は、複数の飼育・栽培経験者を対象として、個人生活史(飼育・栽培歴)、1年・1日の仕事の内容、改造技術、民俗知識、観賞基準などに関する聞き取り調査、実際に飼育・栽培がおこなわれている状況の観察調査、「観賞用動植物」の改造技術に関する文献資料調査を進めた。また、金魚のほかに、オナガドリや盆栽の飼育・栽培や観賞についても調査を進めた。 その結果、金魚飼育にみる改造とは、自然を人間に倚り傾かせ、自然を随順させる技術のことであり、その様態を自然の人間への随順化とまとめられた。金魚の飼育・観賞のほかでは、盆栽やオナガドリにも理想体に嵌合しようと改造する技術がみられ、そこにも自然の随順化がみられた。
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