3年計画の初年度である今年度は、以下の4点について研究を行った。1.戦前に成立した祭礼の成立事情を明らかにする。そのために京都・大阪・神戸で、明治初期から昭和初期までに作られた祭礼をリストアップし、その中でも時代祭、京都染織祭、大阪商工祭、神戸みなとの祭について資料を収集した。2.戦前と戦後で大きく姿を変えた祭礼の、戦前の姿を明らかにする。そのために、青森を中心に分布する「ねぶた」、仙台で祭礼化した「七夕」について、戦前の様子についての資料を収集した。3.戦前に実施された、祭りに似た単発イベントの実態を把握する。このために、平安遷都千百年紀年祭、豊公三百年祭、御大典など、京都のイベントについて資料を収集した。4.戦前にスポーツイベントが年中行事として祭礼化した、釧路市の市民大運動会について、調査を開始した。 こうしたことの結果から、現段階では以下の仮説が導き出せると考えている。1.仮装や風流踊りなど、即興性を生かした「余興」的な部分が、近代の祭礼やイベントには共通して存在していた。2.行事が大規模になっていくにつれ、余興が徐々に定形化し、毎年同じ内容になっていったように思われる。3.さまざまな行事を比較した場合、内容に変化が見られる時期には共通点があるように思われる。4.特に1930年代の「新民謡」ブームが、余興のあり方に影響を与えた可能性がある。 残る2年間の研究では、今年度の調査方針を継続しながら、上記の点についてより明確にしていきたいと考えている。
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