今年度は、公共放送のテレビドキュメンタリーにおける「種族主義」的表現の類型化のプロセスを人類学的に明らかにするために、「番組制作過程」の調査、および「放送倫理と第三者機関」に関する研究を行った。よって今年度の補助金は、主に上記の研究を遂行するための海外における資料収集と聞き取り調査、そして関連資料の購入に当てられた。 1.英国において、「番組制作過程」に関するグラスゴーメディアグループのGreg Philoらの研究動向、Ethnic Minorities and Mediaに関する研究資料などの資料調査を行った。 2.NHKおよびBBCにおいて、「放送倫理と第三者機関」に関する局内の制度や運用について聞き取り調査を行った。BBCプロデューサーガイドラインについては、実務者から資料提供を受けた。英国映画協会(BFI)の国立放送図書館において、英国を中心としたITC/BSCから通信・放送を融合した規制機関OFCOM(Office of Communications)の報告書の検討、および公共サービス放送と文化的多元性について調査した。 3.「番組資料分析」については、当初予定していた「ミニドラゴンズ」が番組制作から10年以上経過し、海外版の制作資料や関係者に直接あたることが困難となっている。よって内容分析と現在調査可能な国内の対象者へ研究範囲を限定しつつ、調査手順と対象について再検討をしている。 4.シンガポールのアジアメディア情報センター(AMIC)において各国研究者からの聞き取りから今後、日本を含むアジア太平洋州においても、放送アーカイブの構築への動きや学際的なメディア研究組織の形成など、文化とメディアに関する研究が大きく発展しそうなことが分かった。「番組制作過程」とマイノリティ問題、および「放送倫理と第三者機関」については、本年度の各成果の投稿準備中である。
|