研究課題
基盤研究(C)
「快適」な老後をいかに過ごすかという問題は、長寿社会日本だけが抱えている問題ではない。アメリカ・ブラジルの日系社会も1880年代よりハワイ、アメリカ本土、そしてブラジルへと移住した日本人(一世)だけでなくその子ども(二世)も老齢期に達し、高齢者の急増という社会問題を抱いている。また、それぞれの多文化社会におけるエスニック・マイノリティという日系人の社会的立場は、老いの問題に文化の問題を添加する状況を引き起こしている。本研究は、複数の文化の狭間で老いを迎えるエスニック・マイノリティとしての日本人移民の老いの過程に焦点をあて、日本人が異文化-ここでは三つの多文化社会(アメリカ・ハワイ・ブラジル)-に適応するために文化変容を遂げてきた過程を比較検討し、多文化社会におけるエスニシティと老年期における文化喪失の過程-脱文化化、あるいは、エスニシティ(記憶の総体)への回帰-が相互の関連しあう領域に文化人類学的な考察を行った。調査項目は、各多文化社会における日系コミュニティ成立の過程と高齢化の過程、日系老人を取り巻く社会状況、日系老人を支える福祉施設の設立の歴史とそこでの日常生活、日系老人のオーラル・ライフ・ヒストリー、各多文化社会における他のエスニック・グループの老いの現状、の5項目である。一世にとって、最初に獲得した文化(日本文化)から、対立型多文化社会アメリカ、統合型多文化社会ブラジルへの一方的同化の過程であると考えられてきた長期的異文化適応の過程は、実は、(1)日本文化と移住先であるホスト文化(アメリカ文化・ブラジル文化)との両立の過程であったこと、そして、(2)年齢とともにホスト文化との関係性が薄れるにつれ、長年両立してきた日本文化が重要な意味を帯びてくるエスニシティへの回帰する過程であったことが明らかとなった。
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『書斎の窓』(有斐閣) 566
ページ: 49-52
『書斎の窓』(有斐閣) 567
ページ: 28-33
『書斎の窓』(有斐閣) 568
ページ: 42-47
『書斎の窓』(有斐閣) 569
ページ: 34-38
『書斎の窓』(有斐閣) 570
ページ: 27-31
Shosai-no-mado(Yuhikaku) no.566
Shosai-no-mado(Yuhikaku) no.567
Shosai-no-mado(Yuhikaku) no.568
Shosai-no-mado(Yuhikaku) no.569
Shosai-no-mado(Yuhikaku) no.570
石井敏、久米昭元編『異文化コミュニケーション研究法:テーマの設定から執筆まで』
ページ: 15-22
In Methodologies of Intercultural Communication, edited by Ishii and Kume(Yuhikaku)