研究課題
基盤研究(C)
3ヶ年計画で行われた本研究の成果報告書は3章で構成され、その概要は以下の通りである。1 第1章「江戸時代奉公人調達・斡旋事業・業者の諸類型試論」では、江戸時代の全国各地にみられる奉公人調達・斡旋事業・業者の類型化を試み、I 領主権力関与強・都市型、II 領主権力関与弱・都市型、III 領主権力関与強・農村型、IV 領主権力関与弱・農村型の4類型を設定することにより、それぞれの奉公人調達・斡旋事業・業者の特質が鮮明に把握できるとともに、前期の武家奉公人確保政策から後期の農村奉公人確保政策への力点の移動がはっきりと読み取れることを明らかにした。このことを通して、江戸時代の雇用関係には、領主・業者仲間・農村共同体などによって雇用主の恣意と業者の中間搾取が排除される法制がそれなりに備わっていたが、明治になってそれが壊れ、「女工哀史」にみられるような雇用関係が生じるに至ったことを論じた。2 第2章「仙台藩の奉公人調達・斡旋事業の歴史的変遷」では、第1章で試みた類型化と歴史的推移を仙台藩において具体的に確認した。すなわち、前期では藩権力の強力な関与の下に農村及び城下から武家奉公人を調達することが重要課題とされたが、中期は次第に奉公人不足が顕著になったことにより、他領から奉公人を引き入れて武家に斡旋する事業が展開する。しかし、後期では武家奉公人よりも農村奉公人の不足が深刻化し、これを打開するため他領者を農村に引き入れて農村奉公人にするための業者を設置するが、結局有効な処方箋とはなり得ず、明治維新を迎えることを示した。3 第3章「江戸時代の買戻しについて」は、すでに研究成果の1つとして発表した論文を収める。わが民法が規定する買戻しは不動産のみを対象とするが、江戸時代には人身(質物奉公人)の買戻しも行われており、これを無視しては江戸時代の買戻しの本質を見誤ることになることを明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (2件)
法の生成と民法の体系(林信夫他編)(創文社)
ページ: 205-247
HAYASHI Nobuo ed. The Birth of Law and System of Japanese Civil Law, SOBUNSHA