(1)2004年8〜9月にポーランド(ワルシャワ)を訪問し、憲法法廷・科学アカデミー法学研究所・社会保険庁などにおいて、資料蒐集および聴き取りを行なった。また、2004年7〜8月には別の研究資金を用いてロシア(ウラジヴォストーク)を訪問し、本研究課題との関連では、沿海地方仲裁裁判所を訪問し、聴き取りおよび経済訴訟の傍聴を行なった。 (2)文献研究および上記の現地調査の結果として得ることのできた主な知見は、次のとおりである。 a.EU加盟を控えて97年憲法に改正を加える必要があるか否かについてのポーランドの法律家・政治家のあいだでの議論を検討した。改正の必要な点、望ましい点について論点整理がなされ、法律家からは憲法法廷の解釈によって処理することは望ましくないという観点から改正が強く主張されたものの、政治的困難さのゆえに加盟前の改正は見送られ、問題は今後に残された。 b.加盟にともなって制度化を義務づけられた労働者の経営参加についての法案の準備状況を検討した。適用対象企業の点でEU基準を上回る内容の政府案に対して、使用者側は労使自治による決定に委ねる方向で、労組側は従業員代表制の導入によって労組の立場が弱まることを危惧する立場から異論を唱えていることが明らかになった。 c.欧州憲法条約草案の起草過程におけるポーランド代表の主張、諮問会議案をめぐる政府間会議におけるポーランド政府の主張、同案に対する態度をめぐる国内における論争について検討した。加盟までの過程で加盟に基本的に賛成する立場に立っていた政治勢力のあいだにも、加盟国としてのスタンスをめぐって大きな亀裂が走っていることが明かになった。
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