本年度は、以下の成果をあげた。 (1)比較家族史学会第49回研究大会(2006年5月20〜21日)において、「グローバル化のなかの家族とその変容-アジアにおける家族とジェンダー」を企画し、総括報告「比較と総括-ジェンダー法史学からの問題提起」を行うとともに司会をつとめた。人口政策や生殖について、日本とヨーロッパを比較する論点を検討した。 (2)北海道大学大学院法学研究科付属高等教育法政センター主催の講演会において、「ジェンダー法史学の意義と可能性」について講演し、「身体と生殖」を検討することの意義を論じた。また、同ワークショップにおいて、「<性と生殖>の管理とジェンダー-ナチス優生法制の歴史的位相」という題で報告した(2007年1月26〜27日)。戦後補償のあり方や、ナチス優生法制と日本優生法制との比較もふまえて、ドイツにおける生殖法制の展開の特徴を明らかにした。 (3)ジェンダー史叢書全8巻中の第1巻『権力とセクシュアリティ』(明石書店)の編集に共編者として携わり、論文「ドイツにおける生殖管理法制の展開」を掲載予定である(2008年出版予定)。現在、論文を執筆中であり、1990年代から国際社会で顕著になっている「新優生学」(リベラル優生学)を批判的に考察するとともに、ナチス経験をふまえた「人間の尊厳」論にとくに注目して検討を重ねている。ドイツ政府・議会報告書、生殖論をめぐる1980年代以降の数多くの議論を用いてドイツの現状を整理するとともに、ナチス期優生法制に関する最新の緻密な地域研究の成果を使用して、ナチス生殖法制研究の充実もはかっている。
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